「斉藤さん!」

佐々木くんの必死な声がして、俺はどうしたのかと、声がした方を振り向いた。
でも、視界は黒くかすんでいて、何も見えない。

「大丈夫ですか?」

「あ、大丈夫、ただの貧血みたいなもの」

頭がジーンとするのを抑えて、俺は笑おうとした。
が、ふらついて、膝を折る。

「斉藤さん!」

「へ、平気。ちょっと屈んでいたら、治るから」

「……」

「佐々木くん?」

「何もできないですけど、そばにいさせてください」

「…あり、がとう。もう、大丈夫だ」

ほんの一分くらい、立っていられなくなっただけだった。
いつもなら、貧血みたいな症状がくると、もっと立っていられないのに。

「佐々木くんが、いてくれたから、平気だ」

まだ心配そうに俺のことを見つめている佐々木くんに俺はそう言った。
言った後に恥ずかしさを感じたが、それは本当のことのような気がして、あまり深く考えるのをやめた。だって、今は、笑っていたいから。




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