たとえば、一生付きまとうような困難と、一時的な苦しみならば、俺は君に一時的な苦しみを与えたいと思う。
確かにその瞬間は辛くてしかたないかもしれない。
だが、しょうもないことに一生を使い果たしてしまうよりはいい。

そうだ。ずっと気のない人に言い寄られるくらいならば、そんな危うい関係は、すっぱりと切ってしまえばいい。

「一紗、ちょっと来てくれ!」

俺は奥で水仕事をしているであろう、一紗を呼んだ。
悠斗は「余計なこと言うなよ」と不機嫌に俺を睨んでいる。

「どうされたんですか?」

とたとたと一紗は走ってきた。
あれ? ちょっと見ない間に痩せた?

「お前こそ、どうしたんだ。ちゃんと食ってるか?」

「え、えと、まぁ…」

嘘をつけない一紗は曖昧な返事を必死にしている。

「一紗。俺を心配させないでくれ。飯を作るのが面倒なら、俺が作りに行ってやるし」

「え、そんな。店長は忙しいじゃないですか。ほら、他のお仕事とか…」

「一紗のためなら、そんなものさっさと片付ける」

「へ、平気。俺ちゃんと食べる。だから、店長は店長の用事を」




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