七瀬美加登
=七瀬美加登side=
ああ、つまらない。気に食わない。
完璧に開き直った人間ほど、かき乱しにくいものはない。
「お久しぶりです、店長。斉藤さんの代わりにお迎えに来ました!」
俺の花屋に行くと、一紗ではなく、元気いっぱいのガキが俺の目の前に走りだしてくる。さっさとここから消えてくれ。
「悠斗、お前はいつまで、ここに居座るつもりだ」
邪魔だ、と俺は言う。
すると悠斗は「お前に名前で呼ばれる筋合いはない」と笑う。
笑っているっていってもそんなの明らかに形式上の話だが。
「しかたないだろ、俺は人の名前は下で呼ぶ主義だから」
「仲良くもないのに、失礼極まりないですね!」
「作り笑いで毒を吐く、駄目な片想いをしている、そんな奴に言われたくない」
「え?」
悠斗はビックリしたように固まった。
これ、いいかもしれない。
「へぇ、片想い、毎日大変だろうなー。そうだ、俺、悠斗くんのために、一紗にも協力してもらえるように、話しかけて見ようかなー」
できるだけ無神経に軽く言葉にする。そうしたら、悠斗はやっぱり後ろめたそうな顔をしながら、俺に余計なことをされないようにと警戒し始める。
「なんだ、その気持ちが、迷惑だってわかってんだぁ。さすが、悠斗くん」
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