「今日は、嬉しかったです。斉藤さん。また、俺と遊んで下さいね!」

自分に気のない人を口説く時に、焦ってもいいことはないのは知っている。
徐々に、で、いい。少しずつ、斉藤さんのなかで、俺の存在を大きくしてもらわないと。
まずはそこからだ。

「うん。今日はありがとう。またね」

俺の気持ちを知らない、斉藤さんは無邪気に笑う。
可愛くて仕方なかった。

「また、お話聞かせてくださいね。俺、斉藤さんのこともっともっと知りたいです」

「え、うん」

いいよ、と斉藤さんはぎこちなく頷いた。

本当に、今日、俺、ショックだったんだよ。
俺が知っている斉藤さんが全てのような気がしていたのに、全く、俺は斉藤さんのこと知らなかったってことが。
大学生だったとか、上京してきて、一人暮らしだったとか…
一人、暮らし?

「あ! 俺、今度、斉藤さんのお家見て見たいなぁ。大学生の一人暮らしってどんな感じなのかなって」

「特に面白いものなんてないと思うけど。それでも、見たいなら、今度、招待するよ」

と、俺の下心を知らない斉藤さんは言ってくれた。




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