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「ここです」
佐々木くんは嬉しそうにラーメン屋さんの入り口で看板を指差した。
俺は見覚えのある名前に首を傾げた。
いや、ラーメンとか東京に来てから食べに来たことなんてないし、田舎にいた時によく通っていたラーメン屋さんとは名前違うし。
じゃあ、何と、同じなんだろう。
「……斉藤さん」
どうしました? と佐々木くんは俺の顔を覗きこむと心配そうに瞳を細めた。
「ど、どうもしないよ、ちょっと、店の名前に見覚えがあっただけで」
どうしてか照れくさく感じて俺は佐々木くんから目線を逸らすと早口にそう言った。失礼だったかな…
「有名らしいから、見覚えあってもおかしくないと思いますよ?」
「そうか、東京に来て少ししかたってなくても、名前くらい何処かで聞くかもだよね。有名らしいし」
「斉藤さんって東京の人じゃなかったんですか?」
「え? そうだよ、言ってなかったっけ?」
「聞いていないです。じゃあ、今日はそのことについてたくさん聞かせて頂きますよ!」
「と、特に聞いても面白いネタのない話だけど、いいの?」
「斉藤さんのことだから、聞きたいんですよ」
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