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待ち合わせの十分前。
俺は余裕をもってきたはずだ。
だが……
「斉藤さん」
すでに待っている佐々木くんがいる。
「佐々木くん、まだ十分前だよ」
早いよ、と俺は言った。
すると佐々木くんは「斉藤さんも早いですよ、十分前です」と微笑んだ。
なんだか上げ足をとられたような気分になった。
「……それもそうなんだけどね」
「…………」
「佐々木、くん?」
じっと俺を見て固まっていた彼に俺は手を振って見せると、彼は飛び上がって、意識を取り戻したみたいだった。
「俺自慢のラーメン屋さんがあるんですよ、こっちに!」
元気一杯に彼は駅前を指差すと、歩き出す。
俺も一緒に歩き出す。
誰かとこうして歩くことが久しぶりだからだろうか。
俺、幸せでしかたない。
あんなにも、初めは行きたくないと不審に思って断ろうとしていた、ご飯のお誘いだったのに。
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