待ち合わせの十分前。
俺は余裕をもってきたはずだ。
だが……

「斉藤さん」

すでに待っている佐々木くんがいる。

「佐々木くん、まだ十分前だよ」

早いよ、と俺は言った。
すると佐々木くんは「斉藤さんも早いですよ、十分前です」と微笑んだ。
なんだか上げ足をとられたような気分になった。

「……それもそうなんだけどね」

「…………」

「佐々木、くん?」

じっと俺を見て固まっていた彼に俺は手を振って見せると、彼は飛び上がって、意識を取り戻したみたいだった。

「俺自慢のラーメン屋さんがあるんですよ、こっちに!」

元気一杯に彼は駅前を指差すと、歩き出す。
俺も一緒に歩き出す。
誰かとこうして歩くことが久しぶりだからだろうか。
俺、幸せでしかたない。

あんなにも、初めは行きたくないと不審に思って断ろうとしていた、ご飯のお誘いだったのに。




- 53 -


[*前] | [次#]
目次に戻る→


以下はナノ様の広告になります。
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -