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それに、俺は……
君を傷つけるために、君を好きになったわけじゃない。
本当に自分勝手な思いだけど、この気持ちは君のために存在するべきだ。
俺は心からそう思う。
つまらないと思っていた俺の人生を褒めてくれた人。
優しく受け止めてくれた人。
笑いかけてくれた人。名前を呼んでくれた人。
俺に幸せをくれた人。
『斉藤さん、俺、斉藤さんのこと好きです。だから、俺のことで傷つかないで下さい。俺は斉藤さんが笑っていてくれたらいいので』
『…え、と』
斉藤さんは戸惑ったように、言葉に詰まっていた。
『俺、斉藤さんを困らせるために、好きになったわけじゃないので』
『倉田さん』
『それがどうしても伝えたかったので、花束なんて口実を作って、会いにきました。でも、斉藤さんが作ってくれた花束を見て、俺、やっぱり、斉藤さんの花が好きだと思いました』
俺はまた客として来てもいいですか?と彼に聞いた。
すると斉藤さんは小さく微笑んで『はい』と言ってくれた。
「ていうか、お兄さん。斉藤さんのこと好きだったんだ」
帰り道、悠斗は言う。俺は恥じることなく、答えた。
「ああ、好きだよ、今も」
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