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「悠斗?」
何をしているんだと後ろから声がして、俺は振り返る。
聞き飽きるほど、聞いている、声だった。
俺のよく知っている、お兄さんの声。
でも、俺の知らない顔をしているお兄さんがそこにいる。
「………もしかして?」
俺は自分の疑問を否定したくてしかたない。
いや、お兄さんが、常連さんとか?
いや、でもお兄さん、一時期、花屋に通いつめていたし?
あれ、女の人じゃなかったのか?
まるで恋をしているように嬉しそうにしていたじゃないか?
いや、斉藤さんなら、ありなの?
「佐々木くんとは、お知り合いなんですか?」
おどおどと斉藤さんは、お兄さんに話しかける。
俺じゃなくて、お兄さんに話しかける。
何、これ?
「ああ、一緒に住んでいるようなものです。こいつの両親はよく家にこいつだけおいて出張に行きっぱなしになるので。一人暮らしだし、俺、ついでに、ご飯作ってやったりと」
「そ、そうなんですか…」
「そうなんですよ」
気まずい空気をまとった二人に俺は疎外感しか感じない。
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