佐々木悠斗




=佐々木悠斗side=


嫌な予感がした。嫌な予感がしたら、確認せずにはいられない、俺の悪い癖。
斉藤さんにそんなこと聞いたらいけないと心の何処かで分かっているくせに、俺は自分が安心したいがために聞く。

「もっと他に何かないですか? その人に」

ただ、常連だった懐かしい人に会うだけなのに、そんなにも緊張する意味がわからない。俺は変なヤキモチを妬いている。

「実は、斉藤さんの好きな人ですか?」

一番、聞きたくないことから俺は聞くことにした。

「え?」

何を言い出すんだとでも言わんばかりに、斉藤さんは固まった。
そして動揺したのだろうか、硬いリボンで指を切ってしまった。

「だ、大丈夫ですか?」

俺は心配になって、聞いた。
斉藤さんは顔色を変えずに淡々と「これくらい」と言った。
俺は、触れてはいけないことに、踏み込んで聞き過ぎたのかもしれない。反省し「ごめんなさい」と謝り、極力その話題から遠ざかった話を延々と、一人で語っていた。

のちに、斉藤さんも何事もなかったかのように、いつも通り、笑ってくれるようになったけども。

俺は、気に食わない。
常連だって人が。
俺よりも斉藤さんのこと知っているであろう、その人が。




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