「えー、昨日のこと、気にしてんの! まじ似合わない!」

「似合うとか似合わないとかじゃないだろ」

人が真剣に話してんのに、手を叩いて大爆笑した友達に俺はもう何も言うものかと口を塞いだ。

昨日、街角でぶつかった人。
俺が謝ったのに無視をしたむかついた人。
しばらく歩いて、ふりかえったそこで、泣いていた人。
とても悲しそうに地面に落ちた花を拾っていた人。

悪いことをしたなって、思った。

「でもさ、本当は心配している振りをして、口説きにいくんじゃなかろうか?」

「わー、いやぁー! 可愛い顔して狼さん!」

「お前らな、俺を何だと思っているんだよ!」

そりゃ、初めてあの人を見た時、口説きたいっておもったけども。
今は純粋に、謝りたいって思っている。
だってあんなに傷ついた顔…だってあれは…

「単純に、謝罪したいんだよ!」

俺は真摯に告白した。
すると友達は「一目ぼれしてすみまてん!」「違うって、一目惚れさせてすみませんだろ!」とかはしゃぎ出す。
こういう賑やかなやりとりは大好きだが、今は、俺もそれに加わる気持ちにはなれなかった。




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