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「本当に、おかしい」
俺はぽろぽろと涙を流した。
音は出ない。べつに声も震えない。
ただ、瞳からたくさん落ちるばかりだ。
「嬉しい」
店長に、佐々木くんと俺とは他人だと言われて、ショックだった。
でも、そうなのだと思わないといけない気になった。
だけど、そうだと思いたくなかった。
別に俺と佐々木くんが友人同士ってわけでも何でもないのに。
他人、だなんて、思いたくなかった。
だから、嬉しい。
こうして電話してきてくれたこと。
俺と仲良くしたいって言ってくれたこと。
「佐々木くん、今度の日曜日の約束、予定あけていてもいいんだよね?」
『もちろんです、俺は貴方とご飯に行きたいです。そう言って、付きまとっていたじゃないですか?』
「そう…だったな」
約束が守られること、それが、幸せだった。
「ありがとう…俺、実はちょっと楽しみにしていた」
『えー、ちょっとですか?』
「それなり?」
『斉藤さぁ〜ん!』
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