斉藤一紗
=斉藤一紗side=
一人ぼっちの家に帰る。
親が大学に行くためにと用意してくれた仕送りの封筒を眺める。
俺は何をしているのだろう。
俺はここに何をしに来たのだろう。
わかってはいるんだけど…
「!」
急に携帯電話が鳴って驚いた。
このメロディーを聞いたのは本当に久しぶりだ。
一体、誰が俺に電話をかけてきたのだろう。
慌てて携帯を探す。
「あった…」
よかったと溜息をつきながら、俺は携帯を開いた。
そしてディスプレイに灯る『佐々木くん』という文字に、手が震えた。
「あ、あの、もしもし?」
『どうして疑問形なのですか?』
「……だって、電話なんて」
どうして俺にかけてきたのだろう。俺なんかに電話をするなんて…佐々木くんにとって俺は、少しは親しみやすい人ってことになっているのかな?
『かけちゃ駄目でした?』
「そ、そんなことない。嬉しい、よ」
『斉藤さん!』
- 35 -
[*前] | [次#]
目次に戻る→
以下はナノ様の広告になります。