斉藤一紗




=斉藤一紗side=


一人ぼっちの家に帰る。
親が大学に行くためにと用意してくれた仕送りの封筒を眺める。
俺は何をしているのだろう。
俺はここに何をしに来たのだろう。
わかってはいるんだけど…

「!」

急に携帯電話が鳴って驚いた。
このメロディーを聞いたのは本当に久しぶりだ。
一体、誰が俺に電話をかけてきたのだろう。
慌てて携帯を探す。

「あった…」

よかったと溜息をつきながら、俺は携帯を開いた。
そしてディスプレイに灯る『佐々木くん』という文字に、手が震えた。

「あ、あの、もしもし?」

『どうして疑問形なのですか?』

「……だって、電話なんて」

どうして俺にかけてきたのだろう。俺なんかに電話をするなんて…佐々木くんにとって俺は、少しは親しみやすい人ってことになっているのかな?

『かけちゃ駄目でした?』

「そ、そんなことない。嬉しい、よ」

『斉藤さん!』




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