七瀬美加登
=七瀬美加登side=
別に俺のものにしたいなんて贅沢は言わない。
ただ君は一人ぼっちで傷つきながら生きて行けばいい。
そんな姿を俺に見せてくれたらいい。
ああ、忙しなく心臓が動いている。
「一紗、さっきの学生とはどういう関係?」
「え?」
学生・佐々木が帰ってから、俺は意地悪く一紗に尋ねた。
一紗は困ったように首を傾げて「俺にもわかりません」と言った。
あーあ、面白くないな。
「わからない関係か。なるほど。特に親しいわけでもないが、他人でもないってところか、うん、じゃあ、他人だな」
「……」
「他人でしょ」
俺は言い聞かせるように強く言う。
すると一紗は「そうですね」と簡単に俺の言うことを真に受ける。
「だったら、あんまり彼に馴れ馴れしくしない方がいいよ」
俺は囁くように笑う。
きっと今、最低な顔をしているだろうな、俺。
わかっていても、やめられない。
顔を青くして「そうですね」と頷く君の姿がたまらない。
一紗は俺の一紗だ。
つまらない男なんかに触れさせない。
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