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三人の間にまた沈黙が下りて少したってからのこと、佐々木くんの電話が鳴り響いた。
「女か?」
店長は鋭い目をして言う。佐々木くんは「昔の彼女」と言いながら電話を切った。
「いいのかよ、出なくて」
「店長さん、出て、どうしろと言うのですか? 俺はもう」
佐々木くんは俺の方を見つめながら黙り込んでしまったかと思えば「もう彼女とか、しばらくいらないかなって」と苦笑した。
「しばらくいらないってずいぶんとおかしい言い方をするじゃないか?」
急に、店長は楽しそうに微笑んだ。久しぶりに見た。店長が、こういう笑い方をするのを。
背筋が震えた。膝も震えた。
店長は、すごく人間が好きだ。
すごく人間が【落胆】していく様を見るのが好きだ。
「そうですかぁ? 俺にしたら、そうでもないですが」
「佐々木くんは若くて、無神経だから、そうなんだろうね」
「店長さんは俺が無神経だってすぐにわかるんですね!」
「なんだ、もう、自分自身認めているんだ。汚いなぁ…その生き様」
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