だけど、俺は彼に、俺が『彼の好きな藤井正輝』だとは打ち明けられずにいる。

それはどうしてなのか俺自身とても謎なことだが、今になって思えば、俺はただの高校生として会話できる相手が欲しかったのかもしれない。

でもそう言いつつ、たまに妄想している。
彼に俺があの藤井正輝だと打ち明けたら、彼はどんな反応をするだろうか、と。
驚くだろうか、喜ぶだろうか、そんなこと延々と考えている。
そんな馬鹿みたいな自分が最近ほほえましい。
少しだけ自分という人を好きになれるかもって思えた。
それもこれも彼のおかげだと思う。

『最近、表情よくなったね』
なんて、専属のカメラマンに言われた時は、本当、泣きそうになった。
嬉しかったんだろうな。

俺って本当に滑稽な馬鹿だと思う。

でも、幸せだから、これでいいと思う。


「明日、学校、行ってみようかな…」


パソコンを前にして、俺は呟いた。
深夜の部屋で明るく光っている画面には彼『ジュン』の日記が表示されている。

「……今さらだけど学校行っても、誰が『ジュン』かなんてわからないのか…」

それは少し寂しいな。でも、それでも面白いと俺は思った。

「そうだ、明日は学校に行って『ジュン』探しをしてみよう」




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