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次の日も学校に、藤井正輝の姿はなかった。
だけど俺は溜息をつかずに、ただ、彼が学校に来ることを祈った。
『ふじのん』さんの思いはいつかつたわりますよって言葉が、胸の中で膨らんでいるからだと思う。
不思議なものだな…本当。
顔も名前も何も知らない人の言葉にこんなに左右されているって。
「何、ニヤついてんだよ!」
一時間目が終わると、俺の友達の勝山が話しかけてきた。
俺は正直に『ニクシー』のことを話した。
後、俺が欠席しまくっている藤井正輝の大ファンだってことも話した。
この二つは誰にも言いたくないことだったけど、勝山なら話してもいいような気がしたからだ。
「マジで、じゃあ、あいつ早く来るように俺も祈っといてやる。てか、俺さ、クラスに空席があるの苦手なんだよなー寂しいじゃん。みんなでワイワイしたいよ、俺。っていうか、お前、『ニクシー』やってたんだな!」
「う、うん」
勢いのいい勝山の言葉に、俺は圧倒された。
「実は俺も『ニクシー』やってんだ。ほらユー『マイニク』になっちゃいなよー」
「…え、勝山もしてたんだ。俺、まだ始めたばかりでよくわかってないけど…」
「気にすんな。ゆっくり慣れていけばいい。……しまった。あのさ、俺、毎日彼女自慢しか日記書いてないけど…大丈夫かって、大丈夫だよな。俺の日常会話も彼女との惚気大半お前は聞いてくれてんもんな!」
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