58
それから俺と正輝は付き合い出した。
金瀬さんには彼氏として正輝のことを紹介した。
金瀬さんは赤飯をはいて俺たちを祝福してくれた。
心の広い人なんだなって思った。
次に、勝山にもカミングアウトした。
というより、いつの間にか勝山にはばれていたらしい。
あえて、二人と俺は距離をとってみたんだ。
とか、自慢げに語った。
俺と正輝はそんな勝山を前に目を合わせて微笑み合った。
もしかしたら、勝山がいて三人だったら、気がつかなかったかもしれない。
もしも隣に彼がいなくなったらどうしようなんて。
未来もずっとそばにいてほしいとか。
それは友情とかそんなのじゃなくて、恋愛感情からだったとか。
気がつかなかったかもしれない。
「潤!」
正輝は人目も気にすることなく俺に抱きついてくる。
でも回りは知らない。
俺たちが付き合っていること。
「馬鹿、気がつかれたらどうするんだ?」
俺は小声でそう言う。
すると決まって正輝は「ばれてもいいよ」なんて言う。
駄目に決まっているはずなのに。
正輝曰く、
俺と一緒にいられるなら、どんなことが起こってもいいらしい。
俺曰く、
そんなに真剣に愛されるとどうしたらいいのかわからない。
- 59 -
[*前] | [次#]
目次に戻る→
以下はナノ様の広告になります。