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体力がない俺は公園に着くと息を切らしていた。
視界もちょっと曖昧で、錯覚の様に、見えた。
でも錯覚じゃなかったんだ。
公園の入り口の近くで誰かを待つように佇む彼は、藤井正輝だった。
藤井正輝だったけども俺は彼のことを『ふじのん』さんと呼んだ。
すると罰の悪そうな顔をして正輝は俺の方を見つめた。
その手には携帯電話が握られていた。
「………潤、なんで俺がここに今いるかって聞かないの?」
「聞かない」
聞かなくてもわかるような気がした。
俺は『ふじのん』さんが公園で待っているって思った時、正輝の顔が浮かんだんだ。
だから、そんなに驚いていない。
むしろこれであっていたんだと、少し納得さえしている。
「聞かなくてもわかるような気がするから」
「潤、怒ってないの。呆れてない?」
「どうして?」
「俺、嘘をついていたんだ」
「正輝は嘘ついていないよ。ただ真実を言わなかっただけじゃん」
「潤…っ」
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