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その日の『ニクシー』の日記は最低だった。
お布団に入りながら夢うつつに打ったのがいけなかったんだと思う。
『タイトル:今日
本文:大切な友達がいて、でも本当に大切に思ってそばにいたいと願っていたのは俺だけなのかもしれない。彼には自分なんていなくてもいいんじゃないかと考えた。そのとき、急に彼との間に溝を感じた。もとからあったはずなのにどうして今さら何だろう。そう思ってたら気がついた。好きだから気がつきたくなかったんだと。自分は彼と対等なんだと思いたかったんだと。くだらない感情だってわかっている。勝手に一人落ち込んで求めて。馬鹿らしくて、泣き出したくて。彼は優しいからこんな俺の傍にいてくれるって言っていたけど、それってただの俺の我がままだ。彼は、俺になんて縛られたらいけない。彼にはたくさんのたくさんの人を引き寄せる魅力があるんだ。何を言いたいのか俺にもわからない。ただ彼の幸せが知りたい。彼の幸せってどこにあるんだろう』
て、いう日記。
なんだろうね。これ。
俺はまだ寝ぼけながら自分の書いた日記を読み返した。
本当、何を思ってこんな悲惨な日記を書いたんだろう。
なのに、どうして、三人からはコメントがきているんだろう。
どうしてだろう。
なんでだろう。
わからない。
『ジュン、俺なら何でも話聞けるから電話してこいや。そんなに悩んでるなら、彼女より優先してやるから』と勝山。
『ジュンくんもジュンくんなりに悩んでたんだ。幸せだろうなって思っててごめりん。俺だって話しくらい聞ける男だぜ! そしてまた元気になったら、一緒に藤井正輝のこと語ろうや!』と金瀬さん。
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