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「ね、潤、俺が…もしも……」
正輝がそう言いかけた時だった。
「きゃー、藤井正輝よ」
「本当だ」
「私ファンなんです」
そう言って女子高生が俺と正輝の間に入った。
正輝は困った顔をして、でも嬉しそうに彼女達と話していた。
すると俺は寂しくなる。
どうして寂しいのかなんてわからない。
どうしてか寂しいんだ。
やっぱり、俺と正輝の間には大きな大きな隔たりがあるんじゃないだろうか。
なんだか俺は正輝にとって。特別なような気がしたいたのは、自惚れだったのかもしれない。
正輝が繊細だったとしても、正輝の周りにはたくさんの人が集まる。
俺なんていなくても大丈夫なのかもしれない。
むしろ、正輝の傍にいたいと願うのは俺の方だ。
決して正輝のためなんかじゃない。
俺が正輝の傍にいたんだ。
遠いな…
俺は何も言わずただ静かに正輝と女子高生が話し終わるのを待っていた。
泣き出したくて逃げ出したくてしかたなかったことは、気にしないことにした。
気のせいに決まっている。
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