44
その時、俺は一人の人間だった。
その時、彼は一人の人間だった。
なんだか正輝の新曲のような気持ちだ。
「恋音って曲友だちソングみたいだって思ってるんだ」
しばらくして、藤井宅リビングにて、俺と正輝は夜ごはんを食べていた。
だってだってさ正輝が一人で家にいるのが寂しいっていうから。
「いや、そうか。恋音は、俺はあれ、潤をモチーフに作ったんだ」
「お、俺?」
驚く俺に、正輝は頷くと、平然と答えた。
「俺、潤のこと大好きだもん」
「……っ」
俺は箸を落としてしまった。
衝撃が過ぎたんだ。
だって、大好きな人にそう言われるなんて、もう、ね!
もう…ね…もう、嬉しいよね。
なのにどうして何処か少し寂しいんだろう。
切ないのだろう。
- 45 -
[*前] | [次#]
目次に戻る→
以下はナノ様の広告になります。