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俺の知っている藤井正輝は笑顔の絶えない人。
俺の知っている藤井正輝は前向きで明るい人。

今、俺の前でベットに転がっている正輝はとても傷ついた背中をしている。

俺が知っていた藤井正輝と、今ここにいる藤井正輝。
俺はその差に泣いてしまったんだ。

俺は彼の何を知っていたんだろうと。
俺は彼の何をそんなにも好きだと思っていたのだろうと。

誰よりも彼のことを知っていると思っていた。
たくさんたくさん彼の歌を聞き、彼の記事を読み、彼のライブにも行き…
学校の彼も知っている、見ていたはずだ。誰よりも傍で。




「どうしてだろう…」



不思議と涙は枯れていく。
俺は目の前にいる正輝の背中と部屋を見渡した。
俺の想像とは違った彼の生活スペース。
それでも俺は自然と想像を上書きした。

俺は思ったんだ。
俺は思ったんだ。

全てのフィルターをなくして彼を見たいと。




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