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=大野side=


どうして俺はあの時、あんな感情になったんだろう。

お昼休み、雑誌の一ページに載っている正輝を見て女の子たちが騒いでいた。
それがどうして嫌だった。
ただ単に、俺よりも先に正輝の記事を見られたのが気に食わなかったのだろうか?
いや、それもなんだか、違うような気がする。

よく、わからない。

だけど、嫌だった。
嫌だと感じた自分も嫌だった。


『藤井はみんなの藤井』


だって藤井正輝はアイドルだし、たくさんのファンの子がいる。
俺だってその一人だ。
その一人だった。いや、今もその一人でいい。
友達になれて距離が縮まったから、俺は錯覚をしているのだろうか。
だから、正輝が他の人にキャッキャッ言われていると嫌なのだろうか。

よく、わからない。

わからないけど、正輝が、その後、すごく辛そうな顔をしたのはわかった。
わかったけど俺は何も言ってあげられなかった。

お昼休みが終わっても、それから時間が過ぎても、結局、俺は何も正輝に言うことも聞くこともできないまま、帰宅していく彼の背中を教室からじっと見つめているだけだった。




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