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「夢を見たんだ」

詳しくは昔の夢だけど、そこは伝えると重たい気がしたからやめた。

「ある男の子が、芸能人になる夢。彼はね、幼いころから、よく芸能界っていうところからスカートされていたんだ。彼はね、ずっと自分のことが嫌いだった。だから、自分のことを必要としてくれるスカウトマンの人の役に立ちたいと思った。彼は幼かったから、よく、意味はわかってなかったんだと思う。でも、彼は両親の反対を押し切って、芸能界に入った。すると彼は一気に有名人になってしまった。もとから目立たない彼だった。だから急に目立つと、なんていうのか、いろいろと大変な目にあった。女の子から告白されたら、困るし、変な誤解や嫉妬のせいで、困った。困ってしまった。そんな曖昧な彼の態度に、周りは失望した。思い描いていた彼と、本当の彼の間にある溝に失望したんだと思う。そして、男子からは女子にもてて調子に乗っているんだと、言われた。彼は決死の覚悟で両親に相談したら、自業自得だと言われ、たんだ。彼は言い返す言葉がなかった。確かに彼は両親の反対を押し切って、芸能人になった。そして今そんなことになっただけのことだ。それから彼のオフは悲惨なままだったが、芸能界では上手く軌道に乗って行った。学生だったから、仕事の日は配慮されていたが、どうしてもって日もあった。そんな時は学校を休んだ。それがまた同級生に反感をかった。どうしてあいつだけそんないい目を見ているんだって。彼は悲しかった。彼はただ、誰かに好かれたかったんだ。愛されたかったんだ。ただ、ただ、誰かに笑ってほしかったんだ。それだけだったんだ。なのに、彼は…」

「彼は、壊してしまったの?」

潤は悲しそうにそう言った。
俺の腕の中で微かに震えながら。

「ううん、彼は、一人になることを選んだ。はじめから、悲劇が起こらないように、小さな部屋の中にひきこもることにした。中学を卒業してからは、仕事以外で外に出ることはやめてしまった」




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