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「ま、カメラマンさんが上手いんだよ。実際の俺なんてこんなんだしね」
雑誌を持って騒ぐ彼女たちに俺はそう言った。
すると彼女達は、急に静かになって、俺の傍を離れて行ってしまった。
「俺…何か悪いこと言った?」
潤と勝山に聞く。
「ううん。ファンが増えたんだと思うよ?」
潤がぼそぼそと答える。
「ていうか、あれはファンじゃないだろ。完全にお前に惚れたね。この俺が言うんだから絶対だ。絶対。藤井、お前は罪な男だな…。顔もいいしスタイルもしいし、そのうえに、何さっきの謙虚さ、笑顔。ちょっとチャラ男みたいな格好しているから、近寄りがたく感じるのに、純粋、みたいな。何それ、俺も真似るわっていうか、俺の彼女に会わせねぇから。ていうか、俺と彼女はラブラブだから大丈夫だろうが!」
勝山は勢いよく答える。
俺はどうしたらいいのかわからなくなってしまった。
「正輝、大丈夫?」
心配そうに俺の顔を覗き込んだ潤に、首を振った。
「ちょっとなんだろう、体調崩したのかな。最近、仕事やりすぎたかな…」
そう言って、その日は帰宅して、部屋にこもった。
ちょっと、一人になりたかった。
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