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=藤井side=


正直に言うと、俺が『ジュン』を見つけた時、世界が揺らいだような気がした。
正直に言うと、俺は今まで内容も理解しないままに歌っていた曲がある。


【君を見つけた時、僕は一人の人間になったんだよ】


そんなフレーズの意味を知った気がした。


確信はまだなかったが、俺は一時間目に保健室に行き、そのまま早退することになった男子生徒を、休み時間に教室の窓から探していた。
たぶん、まだ帰ってはいないはずだ。
彼が早退したのはたった五分前だ。
俺は自分でも可笑しいと思うほどに、窓の外を眺めていた。
すると、勝山が後ろから飛んできた。

「藤井、これな、秘密なんだけど潤はずっとお前が登校してくるのを心待ちにしていたんだ。なのに、こんな時に限って風邪をひくだなんて、潤はどうしていつもここでって時にこんな…って、あ、あいつが、あいつが、俺の友達で、お前の大ファンだ。大野潤っていうんだ」

勝山はそう言って説明して、運動場をとぼとぼと歩く彼を指差した。
やはり、彼が『ジュン』だったのかと俺は納得した。

するとさらに愛おしく感じた。

目が合ったような気がしたけど、彼は無反応だったから、俺の気のせいなのかもしれない。
でも、目が合ったと思った瞬間、俺はやはり【君を見つけた時、僕は一人の人間になったんだよ】というフレーズを思い出さずにはいられなかった。




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