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=ジュンside=
「ただいま…」
俺は一度登校して、帰宅した。
「どうしの、さっきは大丈夫だって言って、学校に言ったじゃないの」
母は驚いたように俺を見つめる。
「母さん、俺、やっぱり、寝ていたほうがいいのかもしんない。風邪がひどかったのかも、お薬飲む、思いっきりのんで思いっきり寝る」
「元気じゃない?」
「元気だよ。風邪かなって思ったけど、大丈夫だと思って俺は学校に行ったんだ。でも大丈夫じゃなかった。幻覚を見たんだよ、幻覚。俺の大好きな藤井正輝がいたんだよ、学校に! 藤井正輝が!!」
俺は驚いて帰ってきた。
俺はきっともう頭がおかしくなってしまったんだ。
幻覚を朝から見るなんて…
「……ね、潤」
「なぁに、母さん」
「それって、もしかして、あんたが待っている藤井くんが今日は本当に学校に登校してきてくれたってことじゃないの?」
「…………じゃ、俺、学校に行ってきます!」
俺は呆れた顔をしている母さんに笑顔で手を振ると家を飛び出した。
手ぶらで。
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