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=香坂side=

わからないことが怖くて、俺はいつも…失うことばかり考えていた。
それはおかしいことだったのかもしれない。

だって、どんなに不安に思っても、それは俺の中でのお話だ。
外の世界は、それと関係なく動いていた。

不安になるだけ…何処かで損をしていたような気がした。

俺が思っていたほどに、
最悪のことは起こりそうにないって思った。
たとえば、そう、それが起こるとしたら、
それは俺が不安の殻の中に閉じこもり続けたら、
起こりうるかもしれない。


「香坂先輩知ってますか? 本当に欲しいものは手を伸ばさないとつかめないんですよ?」


儚い瞳をして、中野くんは俺を見つめて微笑んだ。

「だから、俺の手をとって下さい」

「うんっ」

わからないことがあって、それでいいんだって思った。
失う可能性が存在しているのも嘘じゃないんだと思った。
でも、それは、
これから中野くんと一緒に、乗り越えていけばいいんだと、気がついた。




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