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=中野side=
「何が、わからないんですか?」
辛そうに俯いてしまった香坂先輩に聞く。
俺は香坂先輩の恋人で、誰よりも近くに居るつもりなのに、実際のところ、香坂先輩のことあまりにも知らないことに気がついた。
「俺…香坂先輩のこと…もっとちゃんと一杯知りたいです」
「……っ」
驚いたような顔をして香坂先輩は俺を見上げた。
その瞳がやっぱり涙で潤んでいて、このまま香坂先輩に飛びつきたくなる。
でも、今はそんな時じゃないと、理性で言い聞かせた。
「ね、中野くん、俺、不安なんだ…ずっと」
「何が不安なんですか?」
「いつか嫌われるんじゃないかって…考えてる」
「誰から…?」
もしかしてそれは俺からのことを言っているのだろうか?
だとしたら、俺は…
「中野くんから…だよ?」
自分が情けないと感じた。
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