5
「香坂先輩、明日の土曜日、空いてますか? よかったら、一緒におでかけしませんか?」
ある日のこと、生徒会室に飛び入ると同時に俺は高らかにそう言った。
でも、そこに香坂先輩の姿はなかった。
その代わりに、空くんが「早退したよ」と教えてくれた。
「そうですか…」
「大丈夫だって。香坂だってもう高三にもなるんだから、自分の管理くらいできるだろうしな」
「…そう、ですよね」
俺は頷くといつも座っている椅子に腰を下ろし、すぐに携帯電話を取り出した。
着信履歴も、メールも来ていない。
連絡くらい、くれてもいいのに…
それともあまりにもしんどくて、連絡もいれられなかったのかな?
いろいろ考えて、それでもどれがどうなのか俺にはわからなくて、
ただ『お大事に』と俺はメールを送った。
返信が来たのは、香坂先輩がいない会議の後で、だった。
『心配かけてごめんね。ありがとう』と。
- 76 -
[*前] | [次#]
目次に戻る→
以下はナノ様の広告になります。