57




やっと開いた瞳で見つめたのは、後悔しているって顔をして、俺を見下ろしている、中野くんだった。

「香坂先輩には言いたくなかったんですが、俺、高校に入るまでは悪いこと一杯して、たんです。不良っていうのか、その、考えなしだったと言うのか…上手く言えませんが、香坂先輩からしたら、嫌われても仕方ないような、俺だったんです。でも俺、今度こそは変わりたいって思って…」

「中野くん…」

「いつだって、誰だって俺を疑うことしかしなかった。でも、香坂先輩はただ純粋に俺を信じてくれたから、それがとても嬉しくて…俺は…でも、だからって、誰よりも大切な貴方をこんなことに巻き込んでしまったら…駄目ですよね。本当にごめんなさい」

「……謝らないで」

「そうですよね、許されるようなことじゃ」

「違うの。俺、中野くんに謝って欲しいことなんて何もないのに、謝られてしまうとどうしたらいいのかわからないから…」

確かに怖かったよ。
急に自分の意識が飛んだのも。
何処か遠くで断片的に聞こえた喧嘩の声も。
確かに怖かったよ。

怖かったけど、中野くんがそこにいるなら、大丈夫だって、思っていたんだよ?




- 66 -


[*前] | [次#]
目次に戻る→


以下はナノ様の広告になります。
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -