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何処かで、俺の近くで、中野くんの声がして、俺は慌てて涙を止めようとした。
でも、まだ薬が効いているのか、瞼が重たくて、持ちあがらないせいか、すぐに涙は流れていくばかりだった。

「中野くんは悪くないよっ」

だって、俺が木村先生と空くんの忠告をちゃんと聞いて警戒してなかったから…

それに、中野くんのこともっと知りたいなんて欲張ったから。
そんな気持ちも確かにあったから…
後輩の子からなら、何か俺の知らない中野くんのことも、聞けるんじゃないかって、思って、いたから…

「俺がっ」

「香坂先輩は何も悪くないです。また、また自分のこと責めているんですか?」

「え、と…」

俺が悪くない?

「そんなことないよ…俺が、ちゃんとしてなかったから…」

「違います。これは俺のせいです。俺が…その……」

「何?」

「香坂先輩が大好きだから、もう、悪いことはしないって言ったら、向こうが切れて、こんなことになったんです、だから!」




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