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ちょっとだけ我慢して欲しいと言われて、俺はなんのことだろうかと彼の方に向き直ったら、急に、口元をハンカチで抑えられた。
そのハンカチからは不思議な匂いがして、ふあっと意識が遠のいた。
何処か遠くで、彼が高笑いをしているのが聞こえた気がした。
何処か遠くで、中野くんの懸命な声が聞こえた気がした。
*****
目を覚ますと、薄暗い倉庫みたいな場所にいた。
なんで、俺はこんなところで眠っているんだと疑問に感じながら、瞬きを繰り返した。
「感覚は大丈夫ですか?」
「…え、中野くん?」
「はい、俺です」
まだボーとする意識の中で、俺は中野くんがそばに居てくれていたんだと思うと、安心して、またふあっと意識が遠のいていった。
「香坂先輩…巻き込んでしまってごめんなさい」
何処か遠くで、ううん、俺の傍で中野くんの声が聞こえたような気がした。
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