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「兄ちゃん、」

俺が殴られた痛さにうずくまっていると、香坂先輩がリビングから可愛らしい猫さんのスリッパを履いたままトコトコとかけてきた。

「何、殴ってるの。この子は俺の後輩だよっ」

香坂先輩は俺をかばうように、駆け寄るとそう言った。

「…ただの後輩なら、家に連れてこなくてもいいんだよ。幸」

さっきとはうって変わってデレデレした顔をして香坂先輩に、兄ちゃんは抱きつく。
正直、むかついた。

「すみませんでした。ただの後輩がいきなりお邪魔して、ただのお兄さんに殴りかかってしまうなんて…」

ただのお兄さんの『ただ』だけ嫌味に強調して言った。
すると、香坂先輩には見えないであろう角度からものすごく睨まれた。


「……え、中野くんが殴りかかったの?」


黙り込んでにらみ合っていた俺たちの間で、のほほんとした香坂先輩の声が響いた。
俺はとりあえず、その事実があっているのだから、頷いた。




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