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謝られた意味がわからなった。
どうして香坂先輩が謝るのだろう。

いつも、いつだって、そう…

「謝らないでください。俺には、謝らないでっ」

「…中野くん」

「俺、香坂先輩に謝ってほしいことなんて何もないです。むしろ、俺みたいなのと一緒に居てくれること、感謝しているんですから、俺は」

高校に入学した時から新しい人生を過ごすつもりだった。
なのに、前の学校の噂がいつの間にか広がって、俺はまたぐれそうになった。
そんな時、香坂先輩だけは俺の味方をしてくれた。
過去は過去だって、まるで自分のことのように半泣きになりながら。

『もう中野くんはもうそんなことしない』
って、言ってくれた。

香坂先輩に俺の何がわかるんだって思った。
一目ぼれして、俺が強引に押し掛けるだけの関係をたった数日続けただけなのにって。

でも、屈託のない信頼が嬉しかった。

その時の俺は、香坂先輩の差別のない笑顔を向けられて、泣きだしたくなって、お礼も言えなかった。




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