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「あ……」

ふと、立ち止まった。
こんなにも早く家に帰ったら兄ちゃんが心配するんじゃないかって。

「いや」

でもよく考えてみれば、兄ちゃんは今ごろは仕事だし、帰宅は普通に学校が終わっても俺の方が早いから、今帰ってもばれないか。

よかったと安堵のため息をもらしながら、家の近くの公園を通りかかろうとしたら、急に、何者かに右腕を掴まれて、路地裏の方に引っ張られてしまった。

驚いて声も出なかった。

「香坂先輩、ちょっとだけ静かにお願いしますね」

「え、中野くん?」

……なんで中野くんがここに居るのだろう。
学校はどうしたんだろう。
というか、中野くん学校に来るときと違う服装だと…ちょっと怖そうなイメージが漂っている。

「静かにして下さいね?」

「あ、うん」

強く静かにと言われて、俺は意味もわからないままに頷いた。
きっと中野くんの言うことだから、意味はあるんだろうけども。




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