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「え、あ、ごめんなさい、先生」
俺は何も悪くないはずなのに、申し訳なくなって謝った。
「違うよ、兄さんのほうだよ」
「でも俺、先生の前で」
「もういいよ。遠山君が悪いわけじゃないし…」
「……でも」
先生とても辛そうな顔をしている。



*****


『俺…感情が、きっと人より薄いんだろうな…』『だって、人のこと傷つけてしまっても…すぐに、何もなかったかのように笑える』『ねぇ、最近、感情が続かないの』『楽しいこと嬉しいこともたくさんあるはずなのに…みんな忘れてしまう…』『そんな時、すごく怖くなるの…っ』『いつか俺は空っぽになるんじゃないかって』『なのにどうしてこんな俺に…好きだって言うんだろう』『好きになってもらえるのは嬉しい』『でも応えられないのは、とても辛い』『あ、ごめんね、こんな話して…』


今さら、その言葉の意味が俺にはわかったような気がした。
先生は感情が薄くなんてない。ただ自分の気持ちを封じ込めているだけだ。
いつか空っぽになりそうなのは意思がわからなくなってきているから、人を傷つけてもすぐに笑えるのは他の人に迷惑をかけないように、
でも、先生はそんな自分に、自信がないんだろうね。

「先生、俺は、俺にくらい、我がまま言ってくれていいんですよ。困らせてくれてもいいですよ。怒ってくれても、ただ泣かれても、俺は、受けとめます。それくらいは、それくらいはできるつもりです」




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