「晴ぅーそんなに、兄さんのこと恋しくなったのー?」
「………家に帰れ」
放送室に着くなり、ニコニコと笑う迷惑兄さんに俺はきっぱりと思っていることを言った。すると兄さんは「照れ屋さん」とか言いやがった。
駄目だ、俺、兄さんのテンションについていけない。
「て、いうか、何、放送室占拠してんだよ…」
いつもここではお昼休み放送委員の子がいるはず、なのに。
誰もいないなんて、おかしい。
「俺が頼んだんだ、そしたら、簡単に譲ってくれたんだよ」
幸せそうに兄さんは語った。
「俺にね、できないことなんて一つもないんだ。でも、どうして晴だけは俺の思い通りになってくれないんだろう。とっても面白いよ」
「俺は、面白くない。兄さんのことは嫌いじゃないけど、あまり俺の迷惑になることするなら、怒るよ」
「……俺、晴の、迷惑になってるの?」
しゅんとして、兄さんは泣き出しそうな顔をした。
「いや、迷惑っていうか……あ」
しまった、俺が少し、兄さんに気をとられていたら、いつの間にか、放送室の入り口の前を塞がれた。兄さんはそこでいたずらが成功した子どものように笑った。
「でも晴は誰よりも馬鹿だよね。俺がちょっと落ち込んだふりをしたら、そうやって同情してさ。今まで何回それで俺に騙されているわけ。気が付きなよ、いい加減」
「うるさい…」
「確かに俺はうるさいね。けど、晴は静かすぎるよ?」
「え…?」
「思っていることはね、ちゃんと言わないといけないって。じゃないと自分のことわかってもらえないよ。もう子どもじゃないんだから、それくらいちゃんと理解してほしいな。特に、晴は男の子だろ。恋人のこと守りたいって思っているんだろ。俺に会わせたくないくらいだし…」
「そうだよ、だから、兄さん、諦めて家に帰って!」




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