「そんなことないです!」
………夢?
俺は一人自分の部屋で叫んでしまったのが恥ずかしくなった。
でも、どうして今になってあの日の夢なんて見たんだろう。

「晴、どうしたんだ、晴!」
「に、兄さん?」
部屋の窓を見たら、外から心配そうにこっちを兄さんが見つめていた。
俺は眠たい目をこすりながら、窓を開けた。
兄さんはそこで靴を脱いで、俺の部屋に入った。
友達にこの話をしても、信じてもらえないけど、俺の兄さんは頭がよすぎる代償(だと思いたい)で、ちょっとこういう風に、普通の人がしなさそうなことを平然とする。ちなみに俺の部屋は二階だ。
「帰ってきたんなら、玄関から入ればいいのに…」
「鍵がしまってたんだよ、だから、晴に家に入れてもらおうと思ったら、晴が、晴が、そうだ、晴、悩みがあるなら、俺に言えよ!」
「ううん、大丈夫」
兄さんに相談したら、厄介なことにしかならないことはもう勉強済みだ。
「いや、しかし、さっきはすごく辛そうにしたいたじゃないか!」
「変な夢を見ただけだよ」
「夢は、何かを常に暗示してんだよ。だから、大丈夫じゃないかもしれないだろう」
……先生が、あのこと、まだ悩んでいるってこと?
それとも、俺がまだ、あの日の会話を忘れられないってこと?
でも、兄さんに相談はできない。
これは俺と先生の問題だ。
「ありがとう、兄さんの気持ちは嬉しいけど、これは俺と恋人の問題になると思うから、今度二人で話すわ」
「ちょっとっと、待て、なぞ、俺がいない間になんてもの作って!」
抜け駆けするなんて弟のくせにずるいと兄さんは地団駄を踏んだ。
すると下の部屋から、ものすごい音がして、俺たちは二人して静かになった。




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