11




兄さんが声を荒げるところなんて、久しぶりに聞いた。

「…正直に、話してもいいの?」
俺は変な偽りの言葉なんて並べても今の兄さんには意味がないと思って確認をいちお取る。それに俺って馬鹿だから、洗いざらい本当のこと言わないと、何も説明出来ない。
ああ、ちょと北条さんがうらやましいなって思った。嘘なんてついていないのに、相手にいいニアンスを与える言葉使いとか…

「正直に話してよ」
まだ顔をパーカーの中に入れたまま、兄さんは言った。
泣いている、みたいだった。
何を、そんなにも、寂しがっているんだろう…

「あのね、さっき、アイスを買いに行く途中なんだけど、北条さんが、あくまで北条さんがだよ。兄さんが俺のこと大好きだって言ったんだ」
「え、僕、メグミのこと好きだよ」
何を言い出すんだと呆れた顔をして兄さんは俺に言った。
「その、言いにくいんだけど、そういう好きじゃなくて…こう、恋愛的なものじゃないかって言われてさ…その」
否定されるのがわかってて聞く、それがとても辛い。
兄さんは顔を真っ赤にして「勘違いだよ」と言った。そんなにも焦るだなんて、俺、ショックです。
「メグミ、それで僕と距離を取って座っているの?」
「…うん、まぁ…」
「じゃあ、いいじゃん。僕が違うって言ったんだから、そんなに警戒しなくても…」
兄さんは何もわかっていない。俺が兄さんのこと大好きで、今、俺の心のなか歪んでしまっていて、近づいたら何をするかわからなくて怖いってことも。
何も知らない。
「俺が兄さんのこと大好きだから、離れているんだ!」




- 25 -


[*前] | [次#]
目次に戻る→


以下はナノ様の広告になります。
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -