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コンビニでアイスを買って帰ると姉さんは気分が落ち込んだそうで、家を飛び出て行ったらしい。俺は兄さんにアイスを手渡すと、少し兄さんと距離を取って座った。なんとなく、北条さんの最後の言葉『兄弟でもなんでも、キスの一つや二つ、それにヤる気になればヤれます』が頭から離れないから。

「あ、兄さん、北条さん、用事を思い出したみたいで帰ったよ」
「そうなんだ」
「それでね、なんか、北条さん、兄さんに他にも彼女さんいること知っていたらしいよ」
「そう…」
「兄さん、どうしたの、なんか元気ないよ?」
いつもならアイスを喜んで食べる兄さんが、ずっと部屋の隅っこで丸くなってパーカーの中に沈んでいるなんて…

「具合でも悪い?」
もしかしたら、熱でも出してしまったのかと俺は焦った。そういえば、最近、風邪がはやっていたのに、俺は兄さんにマスクの一つも手渡していなかった。ただでさえ兄さん身体弱いのに…!

「メグミそんなんじゃない…」
「え、じゃあ、どうしたの?」
体調が悪いんじゃなかったら、どうしてそんなにも捨てられた子犬みたいな瞳をするんだよ。俺、わからない。

「……メグミこそ、なんでそこに座るの」

ぼそっと、兄さんはそう言って、顔を完全に伏せてしまった。
「サノちゃんに変なこと言われたの…っ」
「そんなんじゃないよ」

「じゃあ、どうして距離をとるんだよ、ねぇ!」




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