「えええ、北条サノちゃんってあれでしょ、あれ!」
姉さんは『あれ』と連呼している。俺はちょっと見苦しいから、控えるようにこっそりと注意した。が、姉さんはそれを聞いていないようだった。
「北条ちゃんってこの辺のヤ○ザさんの一人娘だよね!」
「え、あ、はい。そうです」
「だと思ったわ。ふっ。メグミの目はごまかせても私の目はごまかせなくってよ!」
「………すみません、この人、変ですが、悪気はないんです、怒らないであげてください」
俺は姉さんの代わりに謝った。すると北条さんは「そんな」とほほ笑む。
「失礼だなんてとんでもないです。私、家が家だから、人から怖がられて…。こんな風にフレンドリーにして下さったの、まなかさんの他にいませんでしたので、すごく嬉しいです」
「あら、本当。可愛いわね?」
「可愛いだなんて…そんな」
………どうしよう、なんか、姉さん、変なスイッチが入りかけている。

バンッ

あまりにも話がずれて、兄さんのことが聞けなくなるのは俺が嫌なので、仕切り直しに机をたたいた。ちょっと力入れ過ぎて、手が痛い。
「あの、兄さんの潔癖のお話に戻ってもいいでしょうか?」
「…あ、はい。あの…実はその、恋人関係もそうなんですが、全く、触れてくれないんです。キスはもちろん、手を繋ぐとか、全くそういうのも、できないみたいなんです、まなかさん」
初耳だった。
俺、案外、触れてるし、触れられている。多少、兄さんは人に憶病だから、俺にくっついても距離はとる。だから、そんなにべたべたってわけじゃないけど。

「確かにあの子、そういうの苦手よね」
姉さんはしんみりと呟いた。




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