「俺に気なんて使わなくていいよ。彼女さんからメール来ているなら、返事してくれていいし、電話ならかけなおしてくれていいし、会いたいって向こうが言うなら、会いに行ってくれてもいいし…」
本当はそんなの嫌だけど、俺、もう十八になりました。それなりに大人だし、それくらい、は、我慢できる。なのに、兄さんは「…いい」と首を横に振るだけで…
俺は自分が情けなくなった。

「メグミは俺のことならわかるんじゃなかったの…?」
「だから、俺に気を使って…」
「…違うよ」
悲しそうな顔をして兄さんは鞄から携帯を再び取り出すと俺に手渡した。電源が入っていなかった。え、兄さんが携帯の電源切っているって…!
「充電落ちたんなら、そこの携帯ショップで充電してもえるよ、兄さん」
俺は兄さんにとって携帯がどれほど大切か知っているから、慌てた。そういえば、今日は俺といても一回もメールや電話をしていないのに、それに気がつかないなんて、俺、最低だ。

「電池ならあるよ」
「え、じゃあ、なんで、電源入れてないの?」

「……今日はメグミと楽しく過ごしたかったから…」

誰にも邪魔されたくなかったとか兄さんはぼそりと呟いた。俺の気持ちも知らずになんて可愛らしいことを言うのだろう、この兄さんは。
「じゃあ、今日は一日、俺と過ごしてね」
言ったからには責任取ってよ、と俺は兄さんの頭をなでた。
「僕、メグミの兄さんだ。子ども扱いすんな」
「はいはい、そうですね〜」
「…だから、やめてよ」
顔を真っ赤にしてわたわたと両手を俺に向かってふる兄さん、可愛すぎる。




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