7.スノードロップ【番外編】




新年明けましておめでとうございます。ハッピーニューイヤーです。
どうも、はじめまして。後期生徒会、会計の未空です。
番外編が多いと苦情が来るかもしれない中、こうして登場してみました。
まぁ、番外編だなんて言っていますが、正直どれも大切なピースです。
ただ視点が他キャラに当たるだけの違いです。はい。

「未空!」

「は、はひっ!」

ビックリしました。誰も来ないと思っていた生徒会室に、依月さんは突如走り込んできただけではなく、大声を出されたので、俺は間抜けな声を出してしまいました。とほほのほ、です。

「頼む、付き合ってくれ」

「ふぇええええ?」

急に何を言い出すんですか、依月さん、と俺は口パクをしました。が、依月さんは全く意味がわからないと言う顔で、じっと俺を見つめます。やめてください。やめてください。俺にとって依月さんは大切なお友達であってそんなそんなあああ!

「なんだよ、未空、付き合ってくれたっていいだろ?」

「ひや、そんな、突然、交際しようだなんて言われましてももも!」

「……交際? あ、違う、そうじゃない。付き合えって言うのは、そういう意味じゃなくて。荷物持ち、そう、荷物持ちだ!」

なんだぁ……荷物持ちですか。また俺の早とちりだったのですね。

「すみません。俺、察しが悪くて」

いつもそうなのです。俺は何処か普通の子たちとは違うみたいで、意思疎通が簡単にできません。同じ国に生まれて同じ学園にいると言うのに。俺はたまに自分だけが何処か別の国の人のような気分になります。

「つわぁ!」

急に依月さんに頭を叩かれてしまいました。俺、依月さんを怒らせてしまったのでしょうか?

「未空、そういう天然なところ、俺は面白いから、好きだよ」

だから、落ち込むな、と乱暴に依月さんは言いました。
俺はその時キラキラと光る何かを見たような気持ちになりました。

「依月さんって、キラキラしていて、王子様って感じです」

俺は思ったまま口にしてしまいました。言った後で、恥ずかしい気持ちになります。ばかばかばか、俺の、ばか!
ほら、依月さんだって困ったような顔をしているじゃないか。俺はなんてことをしてしまったのでしょう。あれ程、考えなしに口を開かないと、決めていたのに。

「未空はおかしな奴だな。俺の何処が王子様なんだよ」

悲しそうな顔をして依月さんは言いました。

「王子様って言ったら、優平みたいな奴のことを言うんだろう」

「そうですか? 俺にとったら、依月さんが、俺の王子様です」

「何処が?」

「キラキラしていることろです!」

「キラキラ?」

「そうなのです。依月さん、いつもキラキラしています。眩しいです」

俺は身を乗り出して伝えます。
依月さんはやっぱり困ったような顔をして、俺から目線を逸らしてしまいます。

「依月さん?」

嫌われてしまったのかもしれないと俺は不安になって彼の顔を覗きこみました。すると、依月さんは大爆笑を始めました。なんなななんで!

「悪い、悪い。そうか、わかった。じゃあ、俺は王子様か」

「笑わないでくださいよぉ!」

「お前よりも背が低いのに、俺は王子様か!」

「あ、もしかして、お姫様がよかったですか?」

「アホ! 誰が!」

「……あ、でも、どっちかと言うと、お姫様っぽいです。依月さん」

「何処がだよ、何処が」

「我儘で、自己中で、悪戯好きで、素直じゃなくて、副会長さんにたくさんお仕事押し付けている感じが………あ」

しまったのです。また思ったままに口を開いてしまいした。本当に口は災いのもとだとあれほど自分に言い聞かせているのにも関わらず、この失態。俺はもう穴でも掘って、そこに住んだ方がいいくらい恥ずかしい奴なのかもしれません。
とにもかくにも、俺はスコップを探し始めました。
ああ、もう、さっさと穴を掘ってそこに入りこみたい。

「未空、何してんだ?」

「スコップを探しているのです」

「スコップ?」

「そうなのです。俺スコップで穴を掘らないといけなくなったのです」

「はあ? なんだよ、それ」

「でも、スコップがないのです」

「ていうか、俺の買い物付き合えって、未空」

「はっはい。今用意しますね!」

依月さんを待たせてはいけないと俺は慌ててコートを羽織って、外に出る準備を整えます。すると依月さんは何も言わず歩きだしてしまいました。

「待って下さいよ」

こうして俺は依月さんの荷物持ちをさせられました。

と、この話が終わると思ったら大間違いで。

依月さんは散々俺を連れ回したあげく、最後に『やっぱり気が変わった』とか言う理由で俺に荷物を押し付けてさきに帰ってしまいました。しかたないので、俺はその荷物を預かることにしました。そして寮に帰ると……そこには俺の誕生日を祝うために生徒会のみんなが。
俺の驚きは頂点に達しました。

「未空、誕生日おめでとう」

ああ、やっぱり俺にとって依月さんは王子様だなって思いました。だって、彼は簡単にキザなことをしでかすからです。

「アンド、騙して悪かった!」

いい笑顔で依月さんは上機嫌です。

「未空が今俺に持たされている荷物が俺からの誕生日プレゼントで、後はみんなからだ」

「あひ、あり、がとうございます」

噛んでしまいました。俺はお礼すらちゃんと言えないような子なのでしょうか? 情けないです。スコップでもあったら穴を掘って入りたいのですが……

「え?」

「未空、さっきスコップ欲しがっていたから、俺からはそれな!」

「えええええ、何時の間に!」

全く気が付きませんでした。あちこちぶらぶらと依月さんに連れ回せれていたのは記憶に有りますが、こうしてスコップを買ってくれていただなんて……

「ありがとうございます、依月さん。俺、さっそく、これで穴を掘って入ります!」

「「「未空?」」」

「あれれ? なんで、みんな、そんな顔をするのですか?」

「未空。今から誕生日パーティなんだよ。行っちゃヤ」

書記の椿は可愛らしく言います。癒されました。そして、そういえばと思いだしました。

「俺の誕生日だったのですか、今日」

「「「反応遅い」」」

「そ、そうなのですよね」

でも、俺は心の何処かでホッとしているのですよ。
こんな駄目駄目な俺なのに、生徒会のみんなは離れて行かなくて、そばにいてくれて。



こんな、俺でもいいのでしょうか?
そんなキラキラとした希望が俺の目の前に舞います。
そしてその中心には、いつも、君がいました。


「依月さん」

「呼んだか?」

「はい!」


そういえば、依月さん、俺に『俺は俺のままでいい』と何回も言ってくれていましたよね?




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