【言葉じゃ足りないの】




2011年10月16日公開
大学生×小学生



毎週、水曜日に、僕に国語のお勉強を教えてくれる家庭教師のお兄さん。
お兄さんはすごく頭がいいんだって。お母さんが言っていた。

「そういえば、エイくん、もう小5なんだよね」

早いな〜とお兄さんは笑った。
僕にしたら遅いよ、まだ小5じゃ、お兄さんと同じ大学に通えない。

「俺がここに来た時は、こんなに小さかったのに」

「そんなにも小さくなかったもん」

「そうか? でもまだまだ小さいな」

可愛い可愛いとお兄さんは言って、僕の頭をなでる。
昔は、お兄さんになでられると嬉しかった。
今でも嬉しくないと言えば嘘。だけど、子ども扱いされているようで悔しい。

「今は小さくても、もっと大きくなるもん」

ついムキになって怒ってしまった。
これだから、僕みたいなのは子どもだっていうんだ。

「僕、大人になるんだもん」

大きくなるんだもん、と俺は両手を広げて表現した。
するとお兄さんは困ったように笑って、

「じゃあ、そうなったら、俺はエイくんに教えることなくなるなー」

「え?」

どうして、と、俺はお兄さんを見つめた。

「だって、エイくん頭いいんだもん。俺じゃ物足りなくなる」

「なんで?」

なんでそんなこと言うんだろう。
僕は、お兄さんのことが大好きで、少しでも近付きたいって思っているのに。

「エイくん、ちょっと俺、何かしたかな?」

「泣いたりして、ごめんなさい。だって、だって…好きなのに」

「え、えと、国語が?」

「お兄さんが教えてくれる国語、一緒にいられる時間が好き、もっともっと仲良くなりたい」

「俺も、もっと仲良くなりたいよ、エイくん」

「え?」

お兄さんがとても悲しそうな顔をしていて、僕は、驚いた。
いつも笑っているお兄さんのこんな顔、はじめてみた。

「エイくん、エイくんさえ、よかったら、俺、ずっと一緒にいてあげるから、泣かないで?」

「ほ、本当に!?」

「本当だよ」

「嬉しい」

僕は子どもだから、この気持ちを伝える言葉を知らない。
だから、国語をいっぱい勉強して、いつかお兄さんに、伝えられるようになりたいと思っていた。


でも、ね、
この時の僕の笑顔が、お兄さんのことが大好きだって、全てを語っていたと、お兄さんから聞かされたのはそう遠くない未来だった。




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