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不審そうな顔で俺を見送る母を顧みず、俺は家を出た。
ミハルは捨てられた子犬のような瞳で俺を見つめている。
「ナツ、ごめん。遅くに」
「ううん、大丈夫」
「直接会って、伝えたいことがあって」
「何?」
「ナツが、俺でいいのって言っただろう。あの時、俺テンパって、言えなったけど、俺はナツじゃないと駄目だよ。それを伝えたかった」
「どうして?」
ミハルには杏梨ちゃんだっているでしょう。
俺は心の中で呟く。
「俺が好きなのは、ナツだけだから」
「杏梨ちゃんは?」
我慢できずに聞いてしまった。
聞いてもいいことなんてないのはわかりきっているのに。
俺はなんて馬鹿なんだろう。
何のためにずっとずっとミハルに感情をぶつけないようにと、耐えてきたんだろう。
でも、もう、いいかもしれない。
いつまでも見てみないふりはできない。
「ミハル、杏梨ちゃんのこと、好きだろう!」
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