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俺はミハルが好き。
だから、杏梨ちゃんには渡せない。

でも、杏梨ちゃんもミハルが好き。

好きな人と一緒にいられない気持ちはよく知っている。
杏梨ちゃんに、いつもミハルを取り上げられて、一人でいることが大半だった俺だから。

『ナツ、俺、杏梨の力になれていなかったのかな?』

優しいミハルは落ち込んだ声を出す。俺は苦しくて泣いてしまう。
きっとこの涙はミハルのことを思って流れているのではない。まして杏梨ちゃんのことを思って流れているのではない。俺自身のために流れている。

俺は俺の軽率な行動を悔やんでいる。

「ミハルは何も悪くない。ミハルは杏梨ちゃんに笑顔と元気を届けていた」

でも俺が杏梨ちゃんのそれを奪うようなことをしたんだ。
杏梨ちゃんはミハルのことが好きだって言った。
なのに、俺は、俺からミハルがとられないことばかりに気をつかって、杏梨ちゃんに対して何も気をつかっていなかった。

『……あのな、ナツ。一緒に来て欲しい』

「え?」

『病院に運ばれた…んだ。杏梨。でも俺』

「うん、一緒に行くよ」

『ありがとう』

「じゃあ、駅前で待ち合わせ」



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