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その日の夜、杏梨ちゃんからメールが来た。ああ、可愛いな、杏梨ちゃんは。だなんて思わないぞ、俺は。もう杏梨ちゃんの本性は知っているし。

『メールアドレス、ミハルから教えてもらったよ。今日は仲直りできてよかったね。ミハルが嬉しそうに私に話してくれたの。あとね、心配してくれてありがとう。ミハルから伝言を聞いた時、うっかり、気を失うかと思ったよ』

正直、俺には(今日、仲直りしちゃったんだ。ミハルから聞いた。心配だなんてしてないくせに、何を言ってんのよ。嫌がらせのつもり?ああ、頭にきて倒れるかと思ったわ)とも読めた。
女の子って怖いな。それに彼女は徹底している。もしも、ミハルが俺の携帯のメールを見ても問題のないように文章を送ってきている。そうか、この前、俺に体育館裏で啖呵を切ったのは、何の証拠も残らないから、だったんだ。ということは、ミハルに、杏梨ちゃんは本性を隠しているってことになるわけで。
俺は震える手で、杏梨ちゃんに返信をする。

『メールアドレス、ミハルから聞いたんだ。今日は仲直りしたこと、一番早く杏梨ちゃんに伝えたかったよ? 心配するに決まっているじゃん。だって、杏梨ちゃん、は、ミハルの幼馴染だし、ね』

もちろん、そのメールに杏梨ちゃんから返信は来なかった。ちょっとやりすぎたかなと罪悪感に悩みながら、次の日を迎えたが、また校門前で可愛らしい振りをして俺を待つ杏梨ちゃんに手を振られた時は、もっと違う内容のメールにしたらよかったと思ってしまった。

「お話、いいかな」

頑張って笑おうとしている杏梨ちゃんに俺は頷き、また体育館裏に行く。すると杏梨ちゃんは声を荒げて「あのまま別れたらよかったのに」と言った。どうして俺が杏梨ちゃんにそこまで言われる筋合いがあるのだろうかと、奥歯を噛みしめる。



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