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お昼休み、元気の出ない身体に俺は弁当を食べさせる。
億劫だ。このまま何も食べずに、ここから消えてしまいたい。

「?」

携帯のバイブが鳴って、俺はゆっくりと画面を見る。
ミハルからのメールだった。
胸が痛む。杏梨ちゃんから言われた言葉が、今さら、俺の中を回り出したように、ぐるぐると。
俺を締め付ける。
苦しい。

「え?」

そして、とどめが、ミハルからのメールの内容だった。
『ナツ、朝、杏梨に会ったんだって? 何を話したの?』だ。
俺はそれを見た瞬間、杏梨ちゃんから、ミハルに連絡があったという事実に、奥歯を噛みしめた。今までだって、杏梨ちゃんはミハルと連絡を頻繁に取っていた。でも、それは……

【しかたない。しかたないことなんだ。ミハルは優しいし、杏梨ちゃんは、身体が弱くて大変だし。俺だって、恋人が大切だから、いちいち束縛するようなことも言わないし。そういうのをひっくるめてミハルを好きだって、思えるし】

と、いう、言い訳を無くしてしまった俺は、ただただイライラした。
だから、返事は返せなかった。

本当は一杯、ミハルに伝えたいことがあった。杏梨ちゃんの身体は弱くないとか、杏梨ちゃんはミハルが好きで、俺に嫌がらせをしていたのだとか……
でも、それを伝えると、ミハルが、傷つくんじゃないかって、俺は葛藤する。また、言ったところで、信じてもらえないんじゃないかって、不安で。
そうだ。ただ、俺は…返事を返せるほどに、度胸も自信もないだけで。




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