「ごめん、俺、明日早いから」

このまま一緒にいたら、俺は間違いなくミハルのことを責めてしまう。
そう思って、俺は必死になって、またねと言おうとした。
するとミハルは申し訳なさそうな顔をして、手を振った。

「じゃあ」

また明日と言って去っていく後ろ姿を見つめて、俺は自分の家に入る。
そして扉が閉まる音と同時にその場にしゃがみこんだ。
立っていられなかった。

「俺だって、記念日に会いたかったよ…」

しかたないことなのに、しかたないと思いたくない俺がいる。
どうして、俺じゃなくて、杏梨ちゃんを優先させたの。
俺がいくら気にしなくていいって言ったからって、やっぱりひどくない?
ミハルは優しいからしかたない、だなんて、本当に俺思っていないだろ?
俺…ミハルは俺じゃなくて杏梨ちゃんの方が大切なんじゃないかって、疑っている。
強がって笑って全て受け入れているつもりで、何も信じていないし、認めていない。不平不満ばかり、俺のなかで溢れて行く。

「馬鹿…」

俺の家の前で待っていてくれて嬉しかった。
ミハルの顔が見れて幸せだった。
ずっと一緒にいたかった。まだ君を家に帰したくなかった。
でも、みっともない姿を、見せたくないから。
何気ない顔で、笑って、文句一つ言わない俺のままでいたくて。

堪え切れなくなる前に、手を振ったんだ。




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